ハンガリーの厳格な移民対応とEU裁判所の判決をめぐる論争

ハンガリー国旗

ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相率いる政府は、EUの難民保護政策に強く反発し、難民や移民に対して厳しい姿勢を示してきました。EUはハンガリーに対して移民に対する扱いが違法であるとして裁判を起こし、ハンガリーは繰り返しEUの規則に違反しているとされ、罰金を課されています。しかし、オルバン政権はこれに従わず、EUとの対立が続いています。この記事では、ハンガリーの移民政策の背景と、EU全体での不法移民問題について解説します。

目次

背景:ハンガリーの強硬な移民政策

ハンガリーは、2015年の欧州難民危機以来、移民に対して非常に厳しい政策を採用してきました。この年、シリア内戦やその他の紛争地域から多くの移民が欧州に流入し、その対応をめぐって欧州各国で意見が分かれました。オルバン首相は、国境管理の強化と難民受け入れの拒否を掲げ、移民に対して厳しい立場を取ることを国民に支持させました​。

ハンガリーは、セルビアとの国境にフェンスを建設し、これを強化することで不法移民の流入を防ぐ政策を実施しました。また、難民がセルビアからハンガリーに入る際には、トランジットゾーンという施設で審査を受けなければならず、その環境は劣悪であったとされています​。これにより、ハンガリーは国際的な非難を浴びることとなり、欧州連合(EU)との対立が深まりました。

EUの法的措置とハンガリーの違反

EUは、難民に対するハンガリーの扱いがEUの法律に違反しているとして、何度も法的措置を講じてきました。2020年、欧州司法裁判所(ECJ)は、ハンガリーが難民を違法に拘束し、法的手続きを受ける前に彼らを国外追放したことがEU法に反すると判断しました​。この判決に基づき、ハンガリーは政策を改めるよう命じられましたが、オルバン政権はこれを拒否し、罰金が科されることになりました。

ハンガリー政府は、難民を送還する行為は国土防衛のために必要であり、EUの政策は不適切だと主張しています。さらに、移民問題がヨーロッパ全体の社会や治安に悪影響を与えているとし、独自の厳しい政策を正当化しているのです​。

ハンガリーの移民への対応

具体的な対応として、ハンガリーの国境警備隊は、セルビアから不法に入国した難民をフェンスを越えて即座に送還する「プッシュバック」と呼ばれる手法を用いています。この行為は、難民が法的な審査を受ける前に国外退去を命じられるため、国際法やEU法に違反しています。2020年の判決以降も、5,000人以上の難民がセルビアに送還されており、これに対して国際的な人権団体や欧州委員会は強く批判しています。

トランジットゾーンでは、難民が劣悪な環境で拘束され、食事の提供もままならない状況が続いていましたが、これもEUからの圧力を受けて閉鎖されました。しかし、ハンガリーはその後、難民がEU域内に入る前に第三国、主にセルビアやウクライナのハンガリー大使館で庇護を申請する必要があるという新たな制度を導入しました。

EU全体での不法移民問題

ハンガリーが移民問題で孤立しているわけではありません。欧州全体でも不法移民の問題は深刻化しており、2015年の移民危機以来、ギリシャやイタリアといった国々が大量の移民を受け入れることになりました。しかし、東欧諸国を中心に、EU全体での移民受け入れの分担には反発が強く、ハンガリーやポーランドはEUの難民再分配プログラムに参加することを拒否しています。

欧州委員会は、EU全体での移民政策の調整を試みていますが、各国の立場が大きく異なるため、調整は難航しています。特にハンガリーやポーランドは、移民が自国の文化や社会に悪影響を与えるとして、移民の受け入れに強く反対しています。一方で、ドイツやフランスなどの西欧諸国は、移民問題を解決するためにEU全体での協力を求めています。

EUとハンガリーの対立は続く

ハンガリーの難民政策とEUとの対立は、移民問題の複雑さを象徴しています。オルバン政権の強硬な立場は国民の支持を得ている一方で、EUとの関係は緊張しています。欧州全体での移民問題の解決には、各国が共通の政策を持ち、協力する必要がありますが、ハンガリーのような国が独自の政策を続ける限り、この問題の解決は容易ではありません。今後も、EUとハンガリーの対立が続く中で、移民政策の在り方が問われるでしょう。

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